水蒸気フィードバックと気候感度の妥当性


[ 放射エネルギーの直接測定による気候感度 ]

CO2-induced global warming: a skeptic’s view of potential climate change, Sherwood B. Idso, Climate Research, 10, 69-82(1998)

Sherwood B. Idsoは、気温や放射エネルギーの直接測定によって二酸化炭素に対する気温の反応性を調べた実験によって、CO2倍増時における気温変化は約0.4℃という値を得ている。この直接測定による値はまったくといっていいほど尊重されていないようだ。実験や観測よりもシミュレーションを重視する風潮が蔓延しているようだ。


[ 海洋の蓄熱量による気候感度 ]

Idosにより得られた0.4℃という気候感度の値は、海洋表層における熱の蓄積を測定した最近の研究報告とも一致している(The collapse of arguments for high climate sensitivity)。Doug Hoytは、Lyman et al. (2006)とGouretski et al. (2007)の研究から、1955年から2005年までの正味の海洋の貯熱量は、0.98×1023 J(誤差 0.91×1023 J)だけ変化し、この値は統計的にゼロと区別が付かないとしている。この貯熱量は、1948年から現在に至る海洋の温暖化として、0.03℃(誤差±0.03℃)の昇温に相当する。これをCO2を二倍にしたときの気候感度に換算すると、約0.4℃という値が得られる。

一方、2005年に発表されたHansenの論文において、海洋の貯熱量を用いて見積もられる気候感度は、約3℃程度であった。しかし、Lyman et al. (2006)やGouretski et al. (2007)などの一連の論文から、James Hansenが2005年に発表した貯熱量は、実際よりも、はるかに過大評価した値であることがわかった。


[ 水蒸気フィードバックによる温室効果の増幅 ]

モデルによって予想される昇温のほとんどは、CO2自身の温室効果ではなく、水蒸気の付加的な増加によるものである。そのため、Newell et al.(1979)によれば、CO2濃度を二倍にしたときの低緯度の気温変化は0.25K未満と見積もられている。

Questions Concerning the Possible Influence of Anthropogenic CO2 on Atmospheric Temperature, Reginald E. Newell and Thomas G. Dopplick, Journal of Applied Meteorology, 822–825 (1979)

「Estimates of the atmospheric temperature changes due to a doubling of CO2 concentrations have been with a static radiative flux model. They yield temperature changes >0.25 K. It appears that the much larger changes predicted by other models arise from additional water vapor evaporated into the atmosphere and not from the CO2 itself.」

「The conclusion is that at low latitudes the influence of doubling CO2 on surface air temperature is less than 0.25K, smaller by a factor of 8 than the findings generally accepted. Our finding is comparable to that by Zdunkowski et al. (1975). 」

Reply to Robert G. Watts' “Discussion of 'Questions Concerning the Possible Influence of Anthropogenic CO2 on Atmospheric Temperature'”, Reginald E. Newella and Thomas G. Dopplickb, Journal of Applied Meteorology, 114–117 (1980)


[ 放射平衡モデルによる温室効果の見積もり ]

Jack Barrettは全温室効果ガス中に占める水蒸気の寄与を分光学的に見積もったところ、約78%という値を得た(68 / 87 ≒ 0.78)(吸収の重なり分を水蒸気の吸収が優先するとした場合は93%になる)。
Jack Barrett, Energy & Environment, Vol. 16, No. 6, 1037(2005)

この値から、各温室効果の寄与を計算すると、水蒸気が37.4K、二酸化炭素が9.3Kとなる。しかし、水蒸気には温室効果だけではなく、潜熱輸送による冷却効果がある。放射伝達と潜熱輸送のみを考慮した計算によれば、水蒸気の蒸発に伴う冷却効果は13.4Kにもなる。その結果、温室効果ガスによる正味の気温上昇は34.3Kとなる(47.7 - 13.4 = 34.3K)。

Jack Barrettによれば二酸化炭素の濃度を二倍にしたときの総吸収率は0.5%の増加となる(0.734-0.729=0.005)。これを単純な比例計算により昇温効果を大雑把に見積もると0.33Kになる(47.7 x (0.005/0.729 ) ≒ 0.33)。もちろん、この計算は正確なものではないが、それでも、このような微小変化の場合は大体のオーダーを把握するには十分である。それでは次に光学的厚さを用いて昇温効果を見積もってみよう。これも余り意味のある計算ではないが、いかに放射平衡による見積もりが無意味かということを示すためにあえて行ってみよう[1]。

赤外吸収率(ε)と二酸化炭素濃度(CO2)の関係は次の近似式であらわされる。
Reid A. Bryson et al., Journal of the Atmospheric Sciences, vol. 37, 472, (1980)

ε = 0.01ln(CO2) + 0.13

τs = -ln(1-ε)

上式より、CO2が300ppmのときの光学的厚さ(τs )は、0.2071。CO2が600ppmのとき、τsは0.2156。したがって、CO2倍増時のτsの増加は、0.0085となる。これを単純な放射平衡モデルに当てはめて参考までに大雑把に温室効果の見積もりを行う(地球惑星状態物理学II)。

I0 / 4(1 - α)(3/2×τs + 1) = σTs4

I0 = 1370
α = 0.3
σ = 5.67E-08
τs : 光学的厚さ
Ts : 地表温度

ここで、Jack Barrettによれば大気の総吸収率は100mの光路長で約73%なので、そこからτsを1.3と仮定すると、地表温度は61.04℃。 二酸化炭素濃度倍増時の全大気の光学的厚さを1.3085とすると、61.41℃。その差は0.37℃。Syukuro Manabeの放射対流平衡モデルは、さらに対流と潜熱輸送による冷却を考慮し実際の値に近づける作業を行う。 いわゆる対流調整と呼ばれる操作だ(Syukuro Manabe, Geophysical Fluid Dynamics Laboratory)。

槌田敦氏によれば、

「この真鍋論文は、まず、大気を高さ方向に層状に分け、それぞれが温度に従って熱線を上下に放出し、これが長時間の後に熱平衡になるとして、大型計算機でシミュレイション(模擬計算)するというものであった・・・・・・真鍋は上記宇宙への放熱の条件と重力場における大気の物理学を無視して、いきなり計算に取りかかって、大失敗したのであった。

そもそも、地球大気を動かない放射平衡で近似することは見当違いである。長時間の計算をして間違った結果を得て、それをパラメータで一挙に調整するというのが真鍋説である」

と指摘している(槌田 敦 (著) 『CO2温暖化説は間違っている』)。

放射が主要な過程になるのは、あくまで大気上層において宇宙へ射出を行うときだけだ。下層大気において地球放射に対する二酸化炭素による吸収はすでに飽和しており(温室効果ガスの分光学)、下層大気の放射平衡などいくら計算しても、それが大気温度を決める条件にはならない(大気温度はどのように決まるか)。実際の気温は、光学的厚さの薄い層から宇宙へ向けた射出が行われるときの大気条件と、断熱減率によってあらわされる重力的な安定度によって温度勾配が決まってくる。また温度勾配は潜熱輸送や対流などに大きく左右される。自然界は平衡ではなく動的なものだから、放射平衡を仮定した計算自体の妥当性が担保されているわけでもない。

CO2/ppm

τs

  300

0.2071

  600

0.2156

  900

0.2207

1200

0.2243

[1] ちなみに、モデル計算においては放射平衡にもとづき放射強制力気候感度といったパラメータが気候変化の指標としてしばし用いられている(先端学際工学 地球温暖化)。


[ 政治的・社会的構築物としての温暖化指数(GWP) ]

Revisiting the Basics, JCOAL news, No.11/2000.4, Mr. Ron Knapp, Chief Executive, World Coal Institute

水蒸気のフィードバック・メカニズムを理解することは大切なようだが、IPCCの報告書の中ではH2Oは温暖化指数(Global Warming Potential GWP)を定められていない。GWPがH2Oに適用されない理由は、GWPが政治的な用語であり一科学的なものでないからである。GWPは相対的放射強制力指数(Relative Forcing Indices)から得られるもので、科学的に測定されたものではなく、政治的に決定されたものである。

IPCCの1995年度報告書、212頁、第5. 1. 2章では、「……これらの指数は使用者の発想による構成概念(user-oriented constructs)である……。従って、こうした指数自体本質的に観測とか検証の対象になり得ない……


[ 水蒸気フィードバック or 北極圏大気汚染 ]

Jack Barrettによれば、水蒸気が温室効果ガスに占める割合は、吸収の重なりを加味した場合には93%にもなる(0.93≒68/73; 光路長=100mの大気を仮定)。この水蒸気による地球放射の吸収率から、温室効果ガス全体に占める水蒸気の寄与はきわめて大きいことがわかる。
Jack Barrett, Energy & Environment, Vol. 16, No. 6, 1037(2005)

モデル・シミュレーションによると、二酸化炭素の増加に伴い気温が上昇し、それに付随して水蒸気量が著しく増加するといったフィードバック効果(水蒸気フィードバック)を想定している。モデル計算の結果によると、全球の平均温度を著しく上げているのは水蒸気フィードバックの効果が大きいためとされている。 時間的・空間的にも局所的に存在する水蒸気量が、全球の平均温度の変化に著しく影響を及ぼしているのだという。これは、局所的な水蒸気量の変動というものを無視してはいけないということだ。しかも、モデルでは北極などの著しい昇温を見込んでいる。そこで極域における水蒸気量の増加は重要な指標になると考えられる。

水蒸気フィードバックが重要だとすると、二酸化炭素と気温の相関だけではなく、むしろ水蒸気の増減と今世紀の気温変化がどのように連動しているのかが非常に重要な指標になる。しかし、現状では、そのような水蒸気量と気温の相関についての情報が十分に提供されているとは到底いえない。IPCCの報告書(AR4)によると、ラジオゾンデによる観測が不十分とされている。

「Water vapour is a key climate variable……Water vapour is also the most important gaseous source of infrared opacity in the atmosphere」

「Additional information on water vapour can be obtained from satellite observations and reanalysis products…… where radiosonde observations are scarce, and in the upper troposphere, where radiosonde sensors are often unreliable.」
Observations:Surface and Atmospheric Climate Change

モデル計算によれば、二酸化炭素による昇温効果だけの寄与というものは限られており、水蒸気フィードバックにおける水蒸気量の増加による追加的な温室効果が気候感度に大きく左右する。一方、水蒸気には温室効果だけではなく、潜熱輸送による冷却効果もある。水蒸気量の増加は雲の形成を活発化させるため、これがネガティブ・フィードバックとして働く。温室効果と相反するこれらの効果が複雑に絡み合ったものが気温となる。

また、緯度が高いほど温暖化の影響が顕著に現れるとも言われている。しかし、高緯度になるに伴い入射される太陽放射のフラックスは著しく弱まる。また、太陽放射の入射が少ないために極低温環境条件が成立している。果たして、そのような極域において水蒸気フィードバックが可能なのだろうか。水蒸気の供給源は太陽放射の強い赤道領域であり、極低温下にある極地は乾燥しているため水蒸気のシンクとして働くと考えられる。そのため、北極は世界中の大気汚染を溜め込む性質を持っている(北極圏大気汚染)。

氷床コアの研究から推察すると、少なくとも過去42万年間に渡って南極はシンクとして働いていることがわかる。南極は「宇宙に開かれた最後の窓」とも呼ばれている。これは南極の水蒸気量が極端に少なくシンクとして働いている証左ともいえる。極域がシンクとして働いているとすれば、極地において水蒸気フィードバックが強く働くとは余り思えない。

『極寒の乾燥した南極は地球上で宇宙に開かれた最後の窓であると言われています。低温のため、大気からの赤外線雑音が非常に小さく、また水蒸気量が極端に少ないので赤外線からサブミリ波における大気の透過率が極めて高い場所です。』
南極2m赤外線望遠鏡計画

一方、寒地気象実験室の力石國男は、北極圏における大気汚染によるアルベドの低下を指摘している。

『人間活動による大気汚染が雪面を汚し,雪面のアルベド(反射率)を低下させて日射の吸収率を高め,融雪を早めていることが考えられる.大気汚染によるアルベド低下は,北極海の海氷や,グリーンランドの氷床,各地の山岳氷河にも等しく作用するので,最近の急激な雪氷圏の変動を説明できる可能性がある.』
月刊ホームページ2006年11月号 青森の雪・日本の雪・世界の雪

実際に、これを裏付けるように、北極で観測された温度変化の94%が汚れた雪による影響を受けている可能性があるとの研究報告もなされている。

「In the past two centuries, the Arctic has warmed about 1.6 degrees. Dirty snow caused .5 to 1.5 degrees of warming, or up to 94 percent of the observed change, the scientists determined.」

過去2世紀に、北極地方は約1.6度を暖めました。汚い雪は0.5〜1.5度の温暖化、あるいは観察された変化の94パーセントまでを引き起こした、と科学者たちは断定した。
Dirty Snow May Warm Arctic As Much As Greenhouse Gases, ScienceDaily, June 7, 2007

The Greenhouse Effect and Climate Change


【 大気上空の汚染 】

大気上空の汚染による温暖化の可能性は、1998年の「エコロジー神話の功罪」という本の中で、槌田敦氏によっていち早く指摘されている。

『最近、1980年以後、地球の温度が上昇しているのですが、その主原因は、この大気上空の汚染ではないかと私は考えています。工場や自動車の排ガスの汚染を規制するだけでなく、ジェット機の排ガスによる汚染を総量規制することが必要になってきました。この汚染を規制すると影響は大きいのですが、必要ではないでしょうか。』(p133)エコロジー神話の功罪

・ 旅客機により生じた絹雲による北米の温暖化

大気上空の汚染による温暖化は、まさにアメリカの温暖化に対しては本質的な要因であるとの指摘もなされている。2004年、NASAは、過去20年間の北米の気温上昇の主な原因は旅客機だった、という研究結果を発表した。これは、絹雲による局所的な影響が北米全体の気温を押し上げていたというものだ。

『アメリカ航空宇宙局(NASA)は、飛行機雲が地球温暖化を加速しているとの研究結果を発表した。NASAラングレー研究センターが、1975〜1994年のアメリカ上空の天候や雲の観測データを分析し、航空機の増加と比例して、巻雲(絹雲)の量が増えていたことを突き止め、過去20年間の北アメリカの気温上昇の主な原因は旅客機だったと結論づけた。
NASA、「飛行機雲が地球温暖化を加速」と発表

Clouds Caused By Aircraft Exhaust May Warm The U.S. Climate

・ アジア褐色雲による大気汚染の影響

V. Ramanathan et al.(2007)は無人軽量飛行機を使い、インド洋のモルディブ上空の高さ0.5-3kmにある雲内部の微粒子の濃度や太陽光が大気を暖める効率などの計測を行っている。その結果、工場の排ガスなどによる「アジア褐色雲」と呼ばれる大気汚染の影響で、雲が出ている間は、太陽光による大気の加熱が50%以上増加していたことがわかった。

(8/2)褐色の雲が温暖化を促進――大気汚染物質から発生

Warming trends in Asia amplified by brown cloud solar absorption, Veerabhadran Ramanathan et al., Nature, 448, 575(2007)


[ 気候モデルにおける予見可能性 ]

モデルの不確かさについては、乱流の専門家であるHendrik Tennekesは、気候モデルは少なくとも1km未満の水平解像度が必要であると指摘している。彼は放射バランスのミクロ構造における非線形フィードバック機構を全て見つけることは、ことわざの「干し草の中に針を探す」くらい難しいと言う。彼は哲学者Karl Poppeの「開かれた宇宙」を読んでいたところ、Popperがローレンツパラダイムに起因するいくつもの問題を予想していたということを発見した。Popperの指摘のひとつに複雑な自然を予測するためのモデルが複雑になればなるほど、初期過敏性に悩まされることになるといったものがある。

ローレンツは1960年代に気象がカオスであることを見出した先駆者であるが、Popperは50年代にすでに複雑系の問題点を指摘したとも言われている。ちなみに、ローレンツ、ポパーともに京都賞を受賞している。

 A Skeptical View of Climate Models, Hendrik Tennekes


[ 水の惑星の気候変化 ]

Climate Change on a Watery Planet. The CO2-Question Re-examined. A. Rörsch, D. Thoenes and F. de Wit , Concept 7 september 2005

「The earth is a watery planet. Seventy percent is covered by oceans. Water vapor is also an important constituent of the atmosphere. In the liquid and solid state it is recognized as clouds, rain and snow.Water has an effect on temperature regulation by three major processes. It absorbs infrared radiation in the atmosphere and this energy is transmitted as kinetic energy to the inert gas molecules, nitrogen, oxygen and argon.

In that way the atmosphere provides for a heat blanket of the surface. The water has a strong cooling effect at the Earth’s surface because it takes up much energy by evaporation, which is again liberated by condensation higher up in the atmosphere. In the third place the continuously changing cloud cover admits a changing amount of solar energy to reach the surface. The balance among these three processes determines the temperature of the surface and the lower atmosphere.」

赤外において、励起エネルギーから運動エネルギーの変換は起こりやすい。

「Since the major absorption bands of the greenhouse gases show saturation, it seems that the photons with corresponding wavelength are all absorbed and transmit their energy in the second way to the surroundings. However, the greenhouse molecules are also emitting infrared photons, and not necessarily through resonance radiation as mentioned above. In the infrared the transformation of excitation energy into kinetic energy is favored.」

温室効果の説明でよく見かけるのが、ひとつのフォトンが何度も温室効果ガスの間で吸収されたり、放射されたりする模式図である(CGER ココが知りたい温暖化 二酸化炭素の増加により温暖化する「証拠」)。江守正多氏の説明によると、「吸収・放出の回数が増えるたびに、地表へ向けた赤外線の量が増える」のだという。しかし、いくら回数が増えようとも、入力されるエネルギーは一定なのだから、入力されたエネルギー以上に増えることはない。江守氏の説明は「ポケットの中でビスケットをたたくと、ビスケットがいくらでも増える」といっているのと同じことだ。

温度変化は、振動励起状態が基底状態へ緩和する過程において周囲の分子に運動エネルギーに変換した時点で初めて生じる。ただ単にフォトンのやり取りが行われているだけならば、フォトン(光子)は熱(運動エネルギー)には変換されずに大気中をさまよっているだけである(大気温度はどのように決まるか)。そもそもフォトンを出して緩和する放射過程の量子収率は非常に小さいので、この仮定自体なりたたない。地球放射を吸収した温室効果ガスは、直ちに周囲の分子との衝突により無放射緩和過程によって失活する確率の方がはるかに高い。

「大気の窓」という言葉がある。これは地球放射に対する温室効果ガスの吸収がすでに飽和していることを示す言葉だ。大気の窓とかぶるような吸収帯を持つ温室効果ガスの増加は温暖化につながるが、その他の飽和している領域ではすでに他の分子の吸収にマスクされ、昇温効果の余地はきわめて小さく、非常に限られたものになる。

「The developed picture has interesting consequences for the view on a possible saturation effect. The energy of photons which are absorbed in the flanks of major emission bands can be remitted as photons from major absorption/emission bands. If these major bands are already ‘saturated’ and continue the game of re-emission and re-absorption throughout the atmosphere, then increased absorption in the flanks by concentration changes may have little or no effect.」

下層大気において温室効果ガスによる赤外吸収が飽和している場合、ネガティブ・フィードバックが強く働く可能性がある。

「In conclusion, in our opinion the reductionist’s point of view that increase of the concentration of any greenhouse gas must lead to more back radiation is too simplistic because it makes insufficient consideration of negative feedback mechanisms that also originate from an increase of the opacity of the blanket.」

The temperature in the atmosphere is expected to be determined by the interaction of inert molecules that form a heat reservoir for molecules that can emit and absorb infrared radiation but merely act as ‘gates’ for the passage of energy.

大気中の温度は、赤外線を放出したり、吸収することのできる分子(これは単にエネルギーの通過のための『ゲート』の働きをするだけにすぎないわけだが)の熱浴を形成する不活性分子との相互作用で決定される。

In this sense increasing CO2 concentration in the higher atmosphere has an increasing cooling effect. Based on molecular physics theory it is argued that this process is in itself temperature sensitive and not in the first place dependent on the concentration of the radiating molecules.

The conclusion is that the climate system has several built in negative feedback mechanisms, which makes it more robust than is usually assumed in IPCC publications.

結論として、気候システムはいくつかのネガティブ・フィードバック機構を備えており、それはIPCCが通常仮定しているよりも、はるかに確かなものである。


[ 気候論争における科学としての問題点 ]

Maintenance of rules for good scientific practice and scientific dialogue in the climate debate, Arthur Rörsch & Bob Carter, Draft  July 10, 2005

According to an alternative view, several temperature-equilibrating forces are at work, which tend to offset each other. In this view the atmospheric radiation balance is by no means the only mechanism, which determines the temperature at the earth’s surface. We live on a watery planet (70 percent is covered by oceans) and rapid circulation of water through the atmosphere acts like a thermostat.

Extra heat flux to the surface, causes evaporation, which on one hand, given the radiation balance, leads to more reverse radiation, but on the other hand, by the evaporation, also acts as a heat absorber. Because more water in the atmosphere also contributes to cloud formation, it shields incoming radiation from the sun, and water returns as 'cooled' rain and snow back to the surface.


[ 水蒸気の分光学 ]

気相中における水蒸気分子の吸収の特徴はその幅広いバンド構造にある。これは二量体や三量体などの吸収の寄与などが考えられている。
http://www.ipc.e.kaiyodai.ac.jp/~miho/download/mihoPhD.chap1-3.pdf

『吸収は線吸収の他にも連続的な吸収帯が存在している。このことは古くから知られており、原因としては2つの水蒸気分子が重合したダイマーの吸収に寄るもの、3 つの分子が重合したトリマーによるもの、衝突が光吸収を引きおこしたもの、far wing が多数重なったものなどといわれているが、理論的なメカニズムはまだ解明されていない。

これを連続吸収と呼び、9.6μmのオゾンしか強い吸収帯が存在しない窓領域 (8 – 12 mm) で重要といわれてきたが、近年になってその他のスペクトル範囲でも重要であることがわかってきた。』

『窓領域では水蒸気が多量にある対流圏下部(500hPa 以下)が大きな影響を持ち、self-broadeningが支配的であることから、foreign-broadening は重要で無いとした。しかし、理論モデルや実験値との詳細な比較により、連続吸収は全ての波数で重要であり、foreign-broadeningの項も影響が大きいことがわかった [Clough et al. 1989]。』


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