お勧め図書 (CO2温暖化説に対する懐疑と今後の環境問題について)

温室効果ガス(赤外活性分子)を理解するためには、量子力学に基づく素養と、分光学や光化学または物理化学の知識が不可欠である。そして、それらの分野でCO2温暖化説に疑問を呈する人たちも決して少なくない。たとえば、伊藤公紀氏は光技術を用いた化学センサーを専門としており、渡辺正氏は光合成の専門家でもある。量子光化学を専門とする中田宗隆氏も、「現代化学」の2007年の8月号(No. 437)や10月号(No. 439)で「地球温暖化現象に学ぶ物理化学の基礎」という記事の中で、CO2温暖化説に対する疑問を呈している。

一方、赤祖父俊一氏はオーロラ研究の専門家であるが、オーロラは大気分子や原子などの励起状態からの発光現象であり、光化学や分光学に関する知見が不可欠である。桜井邦朋はエネルギー宇宙物理学を専門としており、そのため太陽活動などの知見も幅広く備えている。いずれも光化学・分光学に詳しい人たちがCO2温暖化説に疑問を呈しているのは偶然ではないと私は思う。

北極圏のサイエンス                                              

赤祖父 俊一

美しいオーロラの写真もあり、大自然の中の地球を意識させられる内容。北極圏はもっとも温暖化の影響が顕著に現れる地域とも言われているが、赤祖父氏によればテレコネクションによる数十年振動の影響が著しいとも著書の中で分析している。赤祖父氏の著書には、この他に、「北極圏へ―オーロラと地球温暖化に挑む」(あとがきは白日社のページで見れます)などがある。赤祖父氏の著書は洋書がほとんどであり(Syun-Ichi Akasofu)、どれも第一級の専門書なので高額ということもあり、世界の赤祖父氏の日本語の著書はかなり貴重。

赤祖父氏はオーロラ研究における先駆者の一人。論文数は550以上。1981年に「現代全科学者で論文が最も多く引用された1000人(1000 Most Cited Scientists)」の一人にも選ばれている(略歴, Curriculum Vitae)。また、地球温暖化における北極圏での研究の重要性をいち早く説き、国際北極圏研究センター(アラスカ大学)の設立に尽力した。これは現場での研究の重要性を何よりも知っているからこそであり、ここで得られたデータはシミュレーションでは決して得ることのできない重要な情報源として、今後の気候研究にますます重要性を帯びてくることになるだろう。

地球温暖化は本当か?

矢沢 潔

読みやすい。温暖化研究の最新の情報を網羅している。最後に温暖化対策としてメガロマニアな案が紹介されている。

地球温暖化−埋まってきたジグゾーパズル 

伊藤 公紀

気候と太陽活動の関係などについて総説風にまとまっている。経済面での分析なども詳しく検討されている。

温暖化は憂うべきことだろうか

近藤 邦明

地球温暖化の問題だけでなく、代替エネルギーの問題点にも言及した視野の広い本。槌田敦氏のエントロピー論を踏まえた展開もあり、槌田氏の理論のよき解説書にもなっている。少し専門向けレベルだが、エントロピー論の入門書としても価値のある一冊。

環境問題の解決はエントロピー論を踏まえずして成り立たない。工業的リサイクルと自然の循環の違いについて理解することが、環境問題の解決には不可欠。

恐怖の存在

文庫版

マイケル・クライトン

ユナボマーの活動に対して側面支援などによる関与が疑われているEarth First! (アース・ファースト)やELF(地球解放戦線)などの実在するファナティックな環境団体に対する痛切な皮肉を感じる人もいるだろう。これから、エコテロリストが増加する可能性は十分に考えられるので、クライトンの慧眼を近未来に対する警告として受け止めるべきだろう。

ちなみに小説とは関係のない話だが、反捕鯨運動はベトナム戦争の目くらましとして、アメリカ政府によって急浮上した問題である。環境団体の欺瞞について、詳しくは『動物保護運動の虚像*をぜひとも参考にされたい。また、IPCCの設立構想に携わった国連環境計画(UNEP)の本部がなぜナイロビにあるのか、その設立の経緯については次のサイトが参考になる(JOG(097) クジラ戦争30年)。

地球温暖化論への挑戦

薬師院 仁志

社会学者による会心の作。膨大な文献を読みこなしたと思われる記述に著者の執念を感じる。専門外だからこそ成し得た事もあると思う。おそらく理系の専門家でも、ここまでの著書を書ける人は少ない。

原発産業の御用学者であるシュナイダーは過去に寒冷化を煽るなどしており、いかに学者の言説が紆余曲折してきたか、そして、過去の文献から環境研の学者などがいかに無責任な言説を行っていたかを暴いたのは痛快でもある。(御用)学者の言説のいい加減さを改めて思い知らされる作品。

CO2温暖化説は間違っている

槌田 敦

エントロピー論に基づいて理解できるようになると、環境問題の見方もがらりと変わる。より深く知るためには槌田氏の他の著書も見逃せない。なぜ原発が深刻な環境破壊になるのか、槌田氏の著者を丹念に追うことでエントロピー論の視点からも理解できるようになると思う。

槌田氏の開放系エントロピー論は「Bioeconomics and Sustainability」などによって、その位置づけを知ることができる。槌田氏の最新作に「エントロピー経済学入門」がある。エントロピー経済学は、理系、文系など、学際的な分野を横断する野心的な分野であり、まだ黎明期にある。既存の枠組みに拘泥していては環境問題の本質的な理解に結びつけることは困難である。

気候温暖化の原因は何か−太陽コロナに包まれた地球

桜井 邦朋

エネルギー宇宙物理学を専門とする桜井邦朋氏による気候と太陽活動の関係に対する解説。約60ページと非常にコンパクトにまとめてあるが、伊藤公紀氏の地球温暖化と合わせて読むことで、太陽活動が気候に及ぼす影響についてある程度把握できるようになれると思う。他にも「夏が来なかった時代―歴史を動かした気候変動」など太陽活動に関する著書多数。

これからの環境論

渡辺 正

環境ホルモンやダイオキシン、酸性雨の問題など、これまでの騒動を冷静に振り返り分析している。幅広く環境問題を俯瞰したい人のための入門書としては最適の書。また、養老孟司は「いちばん大事なこと*の中で、タバコよりも大気汚染の方が、はるかに肺がんの発生に効いていると主張している。ちなみに、環境ホルモンという考え方を提唱したのは、世界自然保護基金(WWF)のコルボーンと言われている。

(* この養老氏の本は、グリーンピースの圧力により、同団体に関する記述が集英社によりばっさりと削除されている。)

環境危機をあおってはいけない

ビョルン・ロンボルグ

統計にもとづきメディアの煽る環境危機とのギャップを浮き彫りにした作品。とにかく参考文献の量がすさまじい。ただ、代替エネルギーや核融合などへの過度の期待が見受けられる。それら代替エネルギーや次世代エネルギーの問題点は槌田氏などによって指摘されているが、次のサイトなども参考にされたい(環境問題を考える)。

意義あり!生命・環境倫理学

岡本 裕一朗

応用倫理学、環境倫理学に対する問題点を提示。

 

エコロジーと人権

村田 恭雄

エコ・ファシズムに対する懸念を提示。原発や高速増殖炉の問題点など、原子力資料情報室の代表であり、核化学者であった高木仁三郎(故)などの文献を元に論じている。

リサイクルアンダーワールド

石渡 正佳

現役公務員がリサイクル産業の闇を暴く。リサイクル行政の問題点も指摘している。


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